東京高等裁判所 昭和42年(行ソ)1号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕再審の訴は、確定の終結判決に対する不服申立の方法であるから、本件不服申立の対象となつた当庁昭和三二年(行ナ)第五九号事件判決が果して確定しているかどうかにつき先ず審査する。
当庁係属中の右訴訟事件記録によれば、以下の事実が明らかである。すなわち、本件再審原告は、本件再審被告宮下太郎、同浜井俊雄両名が特許権の共有者となつている登録第一七七、一〇五号名称「メリヤス編成機」の特許につき昭和二八年七月九日特許庁に無効審判の請求をしたが、却下の審決を受けたので、右両名を被請求人として抗告審判の請求をし、昭和三二年一〇月一五日原審決取消の上本案につき請求が成り立たない旨の審決を受けた。そこで本件再審原告は、該審決の取消を求めるため同年一一月一六日右両名を共同被告として前記訴訟を提起した結果、事件は当裁判所に係属し、弁護士新長巌が被告両名の訴訟代理人となつて訴訟を追行し、昭和四二年一月三一日原告の請求を棄却する旨の判決言渡があり、右判決は同年二月五日原告奥村文治に、同月一六日被告両名訴訟代理人新長巌に送達された。なお新長巌には上告提起の特別授権がなかつたので、その訴訟代理権は同人に対する右判決の送達とともに消滅した。
ところで、本件記録中の戸籍謄本によれば、右宮下太郎は当該訴訟係属中の昭和三七年八月三一日死亡したこと及び同人には当時相続人として妻及び数人の子があつたことを認めることができるので、宮下太郎に関しては前記訴訟はこれらの共同相続人に承継されたものというべきところ、第一審だけの訴訟代理人があつたため、訴訟手続は右死亡によつては中断せず昭和四二年二月一六日の判決送達と同時に中断するに至つたものである。
そして特許法施行法第二〇条第二項の規定により本件無効審判請求手続に適用のある旧特許法(大正一〇年法律第九六号)第二一条及び同法施行規則第五二条の規定によれば、被請求人数人あるときの特許無効の審決はその全員につき合一に確定させる法意であることをうかがうことができ、そのような審決の取消を求める訴訟は、これまた訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき固有の必要的共同訴訟に該当するから、前記被告宮下太郎につき生じた中断事由は、民事訴訟法第六二条第三項の規定により共同被告浜井俊雄についてもその効力を生じ、結局前記判決は右共同被告の全員につき上告期間が進行しないためまだ確定していないことになる。
したがつて右判決に対する不服の申立は、もつぱら上告の方法によるべきであり、再審の訴によることは訴されない。しかも再審原告は、本件申立は再審の訴をする趣旨であつて上告をする趣旨ではないというのであるから、これを上告申立として取扱う余地もない。すなわち本件再審の訴は、判決確定前の申立に係るという理由で不適法であり、かつ、再審原告が現に挙げているそのいわゆる再審事由はいずれも上告により主張することができるものであるから、民事訴訟法第四二〇条、第一項但書の適用上判決確定後も本件ではこれを再審事由とすることができないので、本訴の前記違法は補正の途がないとしなければならない。(小沢文雄 三宅正雄 荒木秀一)